アメリカ技術視察レポート ~2025 NAB SHOW&現地企業訪問記~
はじめに:
海外企業の取り組みや最新技術動向の把握のため、アメリカへ技術視察に行ってまいりました!
NY、ラスベガス、LAと、計10日間にわたって様々な場所を訪れました。特にラスベガスでは、放送・メディア業界最大のイベントである「2025 NAB SHOW」に参加してきましたので、その内容を中心にお伝えします。
NY編:企業視察を通じて感じた技術と文化
視察の最初の訪問地はNYでした。ここでは、いくつかの企業を訪問して感じたことを中心にお伝えします!
- アメリカと日本では、地理や文化、取り扱う番組など、前提として異なる点は多々ありますが、技術的には非常に多くの学びがありました。特にIP化を勉強中の私にとって、実際にIP化されたシステムの現場を目にし、担当者の方と直接お話できたことは、大変貴重な経験でした。
- また、中継車の中を見学する機会があったのですが、その圧倒的なスケールに驚くと同時に、ユーザーに合わせてモニタや機材を自動で動かせるなど、細部にまで配慮が行き届いているところに感心しました。こうした工夫の数々にもエンジニア心をくすぐられ、写真を撮る手が止まらなくなりました。
- NYでは、最新技術に触れる機会が多くあった一方で、スタジオのセットや機材には、歴史あるものを長く大切に使い続けている様子が随所に見られ、感銘を受けました。そうした機材やセットが調和して作りだす1つの空間と、そこから生まれる独特の雰囲気が素敵に感じられました。
Las Vegas編:2025 NAB SHOW 参加
今回の視察の最大の山場、アメリカ・ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)で、4月5日から9日(現地時間)まで開催されていた「2025 NAB SHOW」についてお伝えします!
NAB SHOWとは
NAB SHOWとは全米放送事業者協会(National Association of Broadcasters:NAB)が主催する放送機器・メディアのソリューションの展示会です。102年目の開催となる今回のNAB SHOWでは、WEST HALL・NORTH HALL・SOUTH HALLの3つのホール使って展示が行われていました。(昨年使用されていたCENTRAL HALLは現在改装中でした。)今年の2025 NAB SHOWには160か国から55,000人の登録参加者が集まったようです!
↑2025 NAB SHOW 会場MAP
昨年の2024NAB SHOWのレポートにもありましたが、各ホール間は距離があるので、Vegas Loopを利用して移動しました。噂には聞いていましたが、ライトアップされた狭い地下トンネルを颯爽と走り抜ける様子は、近未来的でワクワクしてしまいました。
↑ラスベガス・コンベンションセンター内の移動に活躍したVegas Loop(Central Stationにて撮影)
2025 NAB SHOWの所感
広大な会場には、世界中から集まった最新技術が所狭しと並んでいました。事前に「これを見よう!」と決めていたものもいくつかあったのですが、会場に着いたらあれもこれも気になってしまい…。結局、全然時間が足りませんでした。
私自身の主観にはなりますが、会場全体を巡って感じた印象を以下にまとめます。
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放送機器におけるIP技術の普及と進化
IP技術はもはや基盤技術として確立されており、その上でクラウド、AIといった技術が当たり前のように組み合わされている点が印象的でした。 -
AI技術の活用
会場の至る所で目にしたのがAI技術の活用です。コンテンツの分析やタグ付けはもちろん、編集支援、グラフィック生成、データ分析など、その応用範囲は非常に多岐に渡っていました。
個人的に気になったのは、以下のようなAI技術の活用事例です。- スポーツ中継における選手のトラッキング、距離計測、データ表示、テロップ自動生成
- 映像分析による自動ハイライト生成
- 楽曲構造を維持したままの尺自動調整
自動文字起こしや翻訳の機能などが追加された製品も多かった印象です。
AI技術の活用が着実に進んでいるように感じました。 -
ソフトウェア化の加速とクラウド活用
従来の映像制作は専用のハードウェア機器を中心に構成されていましたが、現在では多くのメーカーが製品の機能をソフトウェア化し、より柔軟で拡張性の高いソリューションを提供し始めているように感じました。クラウドネイティブなソリューションの展示も目立ち、コンテンツの管理から配信、制作、そして監視に至るまで、あらゆる領域でクラウドの活用が浸透している様子がうかがえました。 -
多様なフォーマットへの対応
SMPTE ST 2110、NDI、SRT、JPEG XSといったIP伝送プロトコルの活用が加速しており、異なるIPフォーマットが混在する環境への対応が、より一層重要視されていると感じました。
当社の所有する機器に関するアップデート情報など、個人的に試してみたいと思えるものもいくつかありました。普段なかなかお会いする機会のない企業の方々と直接お話をして情報を得られたのは、大変貴重な経験でした。
余談:ラスベガスのエンタメ
NAB SHOW視察後の夜は少し時間があったので、ラスベガスならではのエンタメも楽しんできました。特に、ずっと楽しみにしていたSphereへ!外観からすでに期待感がすごかったです。
詳細を書きすぎるとSphereのレポートになってしまいそうなので簡単に触れますが、あの圧倒的なスケールと映像美は圧巻の一言。どこをとっても素晴らしく、瞬く間にその世界観に引き込まれました。鑑賞後は興奮冷めやらぬといった感じで、本当に素晴らしい体験でした。
LA編:最新技術の活用
視察の最後の訪問地はLAでした。LAでもいくつかの企業を訪問しました。
- LAで最初に訪問した企業では、エンターテインメントとテクノロジーの融合を目の当たりにしました。リアルタイムレンダリング技術のゲーム以外の分野への応用や、バーチャルプロダクションの可能性に驚き、また、技術的な細部へのこだわりと、より良い映像表現を追求する姿勢にも強く感銘を受けました。世界最大級の最新設備を見学することができ、非常に刺激的な視察でした。
- 最後に訪問した企業では、現在の技術動向を把握するとともに、ビジネスモデルの変化についても深く考える機会となりました。一方、長年にわたり使用されてきたスタジオや設備が、歴史的な価値を保ちつつ現役で稼働しているところも印象的でした。
おわりに:
今回、初めての海外視察を経験したのですが、視察はもちろんのこと、放送局をはじめとする多くの企業の方々と直接交流できたことは、私にとって非常に大きな収穫でした。各社の現在の運用状況から技術的な今後の展望まで、多角的な視点で意見交換を行うことができ、大変刺激を受けました。現地でお世話になった皆様に心より感謝申し上げます。
技術革新のスピードはますます加速しており、私自身も常に新しい情報を積極的にキャッチアップし、変化に柔軟に対応していく必要があると改めて強く感じさせられました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。