LAでWaymoに乗ったら未来すぎた - Google Cloud Next 2025 番外編
こんにちはアメリカで毎日ハンバーガーを食べて過ごした倉田です。今回は、先日体験してきた「未来の乗り物」について、興奮冷めやらぬうちにお伝えしたいと思います。完全自動運転タクシー「 Waymo(ウェイモ)」です。
きっかけはGoogle Cloud Nextとドジャース観戦
先日、私は初めて Google Cloud Next 25 に参加するため、ラスベガスへ飛びました。ラスベガス自体、個人的には2017年の CES 以来。久しぶりの訪問でした。
今回の出張、実は旅費を抑えるためにちょっとした工夫を。大阪からのフライトは、ホノルル経由のハワイアン航空が最安値。行きも帰りもホノルル経由という、ちょっと変わったルートを選びました。
そして Next 最終日。帰路ももちろんホノルル経由なのですが、ラスベガスから直接ホノルルではなく、一旦ロサンゼルス(LA)でのトランジットを含む便でした。
トランジット時間を「有効活用」するため、ドジャースタジアムでのドジャース対カブス戦のチケットもしっかり購入済みです。
試合は夜からなので、昼間の時間も無駄にはできません。そこで計画に組み込んだのが、以前から非常に興味があった Waymo の自動運転タクシー体験と、LACMA(ロサンゼルス・カウンティ美術館)訪問でした。
ところが、ここでちょっとした問題が発生。宿泊していた LAX 空港近くのホテル、地図上では Waymo のサービスエリア内のはずなのに、いざアプリで確認すると「ここでは乗降できません」との無情な表示…。どうやら空港周辺はまだ対象外のようでした。
仕方がないので、まずは腹ごしらえ。有名なドーナツ店「Randy’s Donuts」まで歩いて移動しました。巨大なドーナツのオブジェが目印の、あのお店です!映画『アイアンマン2』で、トニー・スタークがあのドーナツの中でドーナツを美味しそうに食べていたことでも有名ですよね。(5月に代官山に日本1号店ができるそうですね。やっぱりすげえな東京。)
Randy’s Donuts はサービスエリア内であることはアプリで確認済みです。購入した Glazed Raised (大変アメリカンで美味でした)を齧った後に改めて Waymo アプリを起動。目的地を LACMA に設定し、配車を依頼しました。待ち時間はわずか5分の表示。ほどなくして Waymo が到着。Randy’s Donuts から LACMA までの約40分の道のりが、なんと16ドル台! Uber や Lyft と比べてもかなり安く感じました(時間帯によるのかもしれません)。
これが、私の衝撃的な Waymo 初体験の幕開けとなったのです。そして、この体験があまりに「未来すぎた」ため、結局ドジャース観戦の後、ホテルへの帰りにもう一度乗ってしまうことになるのですが…その話はまた後ほど。
Waymo ってどんなサービス?
さて、ここで改めて Waymo について簡単にご紹介しましょう。
せっかく Google Cloud Next に参加したのですから、同じ Google(Alphabet)の最先端技術である Waymo を調査するのは、技術好きとしては当然の流れですよね!?
Waymo(ウェイモ)は、元々 Google の自動運転技術開発プロジェクトとしてスタートし、2016年に独立した企業です。彼らが開発した「Waymo Driver」という自動運転システムは、運転席に誰も座らない「完全自動運転」を実現しています。そして、その技術を使った配車サービスが「Waymo One」なのです。
サービスエリアは、世界で最初に一般向けの商用サービスを開始したアリゾナ州フェニックスを皮切りに、サンフランシスコ、テキサス州オースティンへと展開。そして、私が今回利用したロサンゼルスでも利用可能となっています(LA での本格的な一般向けサービスは2024年後半頃から始まったようです)。
LAでのサービスエリアは、サンタモニカからダウンタウンLAを中心に、ハリウッド、ビバリーヒルズ、USC 周辺、最近ではウェストチェスターやイングルウッドの一部を含む広大な範囲(約89平方マイル/約230平方キロメートル!)をカバーしており、24時間年中無休で走っています。ただし、先ほど触れたように、2025年初頭現在、LAX 空港への乗り入れはまだのようでした。
この Waymo Driver の技術、一体どうなっているのでしょうか?公式サイトなどによると、非常に高度なセンサーと AI の組み合わせで成り立っているようです。
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センサー: 車両の屋根や周囲には、LiDAR(ライダー)というレーザーセンサーが搭載されており、これで周囲の物体との距離を正確に測って3Dマップを作成します。さらに、多数の高解像度カメラ(私が見た Jaguar I-PACE にはなんと29台も!)が360度、数百メートル先まで見通し、信号機の色や道路標識、歩行者などを細かく認識。加えて、レーダーが悪天候(雨や霧など)の中でも物体の速度や距離を確実に捉えるそうです。まさにセンサーの塊ですね!
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AI(ソフトウェア): これらのセンサーが集めた膨大な情報を、車載の高性能コンピューターがリアルタイムで処理。「周囲に何があるか」「他の車や人はどう動くか」を瞬時に判断し、事前に作成された超高精度な地図情報と照らし合わせながら、安全かつスムーズなルートを計画・実行します。しかも、これまでの何百万マイルもの走行データから常に学習し、賢くなり続けているというから驚きです。
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安全性: もちろん、安全性は最優先。厳しいテストやシミュレーションはもちろん、万が一に備えてブレーキやステアリング、電源系統なども二重化(冗長化)されているとのこと。安心して乗れるための工夫が随所に凝らされています。
利用方法はとても簡単で、手持ちのスマートフォンに「Waymo One」アプリ(iOS/Android対応)をインストールし、アカウントを登録。あとは目的地を入力して配車を依頼するだけです。
ついに乗車!1回目の Waymo 体験記(Randy’s Donuts → LACMA)
予約から配車まで
Randy’s Donuts 前で Waymo One アプリを起動し、目的地を LACMAに 設定。料金(16.46ドルと表示)と到着予定時間を確認して、いざ配車依頼!地図上には、こちらに向かってくる Waymo 車両のアイコンが表示され、リアルタイムで位置が更新されます。近づいてくる様子を眺めるだけで期待が高まります。
数分後、アプリの通知と共に、白い Jaguar I-PACE ベースの Waymo 車両がスーッと静かに目の前に到着…せず素通りして行きました。Waymo はどこででも乗降できるわけではなく、安全に乗降できる最寄りの場所を指定されるのです。私が地図の乗車指定場所を少し見間違えていて、急いで停車している Waymo に乗りに入った格好です。
乗車:未来への扉を開ける
アプリの「ドアを開ける」ボタンをタップすると、カチャリとロックが解除されます。いよいよ乗車です。(なお、登録することで Bluetooth を有効にしておくと次回からは乗車時に自動でドアのアンロックができるようになります。)
ドアを開けて乗り込むと…当たり前ですが、運転席には誰もいません! 「Good morning, Tomo」というメッセージが。ハンドルだけがそこにある光景は、やはり非日常的で、未来感に溢れています。「おおっ」と思わず声が出てしまいました。
車内は清潔で、普通のタクシーやライドシェアと変わりません。ダッシュボードと後部座席の前の中央部分にはタッチスクリーンが設置されていて、現在地やルート、到着予定時刻などが表示されています。最初はアンビエントなBGMがかかっていますが、好きな音楽を選んだり、エアコンの温度調整なども可能です。
走行:自動運転の実力
シートベルトを締め、準備完了。タッチスクリーンの「Start ride」ボタンを押すと、いよいよWaymoが走り出します。
乗る前は、正直少し緊張していました。 本当に大丈夫なのだろうか?と。しかし、走り出してすぐにその不安は完全に消え去りました。
自動でスルスルと回るハンドル。驚くほどスムーズな加減速。周りの車の流れに合わせた自然な車線変更。赤信号での滑らかな停止。全く怖さを感じることはなく、むしろ非常に安心感がありました。 その挙動は、まるで長年運転している熟練ドライバーのような、とても「人間的」な運転だと感じたのです。
そして、乗車中に「これはすごい!」と特に感心した出来事がありました。片側2車線の道路を走行中、前方の走行車線上に、ハザードランプをつけて停車している車を発見したのです。人間のドライバーなら、一瞬「おっと」と戸惑うかもしれない状況です。
しかし、Waymoは何の躊躇も見せませんでした。ごく自然にスピードを緩め、隣の車線の安全を確認すると、スムーズに車線変更。 そして、何事もなかったかのように停車車両の横を通り過ぎていきました。この一連の淀みない動きを見て、「このWaymo Driver、めちゃくちゃ信頼できるぞ!」と、感動すら覚えました。この様子は、興奮してしっかり動画にも収めています!
車内スクリーンには、Waymo が周囲の車両や歩行者、自転車などをどのように認識しているかがリアルタイムで表示されます。センサーが捉えた情報が、まるで SF 映画のように可視化されていて、これも見ていて飽きません。360度センサーが確実に状況を捉えているのですから、人間のドライバーより目配りできてますよね、そりゃ安心だ。
最初の緊張はどこへやら。約40分間の乗車中は、興奮と感動、そして深い安心感に包まれながら、移り変わるLAの街並みを眺めていました。
降車:あっという間の未来体験
快適なドライブはあっという間に終わり、Waymo は LACMA の指定された降車ポイントに寸分違わずスムーズに停車。アプリで乗車終了の手続きをして、ドアを開けて外に出ます。
「本当に着いた…しかも無人で…」。初めての Waymo 体験は、想像を遥かに超える素晴らしいものでした。
感動再び!2回目のWaymo体験記(野球観戦後)
LACMA を見学し、夜はドジャースタジアムで野球観戦を満喫。大谷選手や佐々木選手の活躍に大興奮!…と行きたいところですが、16失点0得点での大敗という歴史的な試合に立ち会い、時代の生き証人となってしまいました。それも良い思い出です。多分。長い行列を並び、無料のシャトルバスでユニオンステーションまで移動します。
ユニオンステーションからホテルまでどうやって帰ろうかと考えた時、私の頭にはもう一つの選択肢しかありませんでした。
「そうだ、帰りも Waymo に乗ろう!」
昼間のあの感動的な体験が忘れられず、迷わず Waymo One アプリを起動。今度は夜間のドライブです。料金も Uber、Lyft とほぼ同じでした。前述のようにホテル直行とはいかず、500mほど離れた場所で降車せねばならないのですが、そんなこと微塵も気になりません。
暗い道でもちゃんと停止車両や車の側に立っている人を認識しています。
夜の道は昼間とはまた違った雰囲気でしたが、 Waymo の運転は相変わらず安定そのもの。交通量が多い場面や、暗い道でも、不安を感じることは全くありませんでした。むしろ、昼間の体験で得た信頼感があったため、よりリラックスして乗車できた気がします。2回目の乗車で、Waymo への感動は確信へと変わりました。
途中、他の Waymo と並走するシーンがあったのですが、画面上ではちゃんと Waymo と認識してるんですよね。ここで人間のドライバーなら仲間意識のようなものが湧くと思うのですが、あちらの車両がこちらの車線に車線変更したいらしくずっとウィンカーをつけているにも関わらず、安全のためか一歩も譲らずということがあり、思わず「入れてやりなよー」と話しかけてしましました。
まとめ:Waymo 体験で感じたことと未来への期待
というわけで、LA 滞在中にまさかの2回も乗車してしまった Waymo。今回の体験を通して感じたことをまとめたいと思います。
まず、技術のすごさ。センサーとAIが連携し、複雑な交通状況をリアルタイムで判断して安全に走行する。まさにSFの世界が現実になった感覚でした。そして、その安全性と信頼性の高さ。特に、予期せぬ障害物(停車車両)に遭遇した際の冷静かつスムーズな対応には、本当に感心させられました。
個人的には「未来すぎる!」と感じる体験でしたが、驚いたのは、LA の街では Waymo がごく普通に受け入れられている様子だったことです。他の車も Waymo に対して特別な反応を示すことなく、完全に日常に溶け込んでいました。
料金面でも、今回利用した限りでは、同じような距離なら Uber や Lyft などの配車サービスと大きく変わらないか、むしろ少し安いくらいの印象でした。これも普及を後押しする要因かもしれません。
一方で、こんな話も聞きました。Waymo は安全を最優先するため、全体的に運転が非常に慎重で、時には人間が運転するよりも目的地到着までに時間がかかる傾向がある、と。確かに、急いでいる時には少しじれったく感じる場面もあるかもしれません。TPO に合わせて他の交通手段と使い分けるのが賢いのかもしれませんね。
とはいえ、今回の Waymo 体験は、自動運転技術がもたらす未来の移動や社会の可能性を強く感じさせてくれるものでした。交通事故の削減、高齢者や交通弱者の移動支援、移動時間の有効活用… Waymo のような技術が普及すれば、私たちの生活はより安全で、より便利で、より豊かになるに違いありません。
もし皆さんも、フェニックス、サンフランシスコ、オースティン、そしてロサンゼルスを訪れる機会があれば、ぜひ Waymo One を体験してみてください。きっと、私と同じように「未来」を感じられるはずです!おすすめです!